国家試験 要配慮者 支援専門員の経験から

コラム

私は2018年から、ある国家試験の配慮を要する受験者の支援専門員を担っている。

社会通念上、国家試験、あるいは民間資格試験には”障がい者”や”妊婦”など配慮を要する場合、事前申請のうえで試験当日に環境や時間、福祉用具の持ち込みなどの配慮を受けることが可能である。

合理的配慮の内容は多様であり、パニック障害で大声や物を投げてしまうため個室、肢体不自由(車いす)によりテーブルの高さ調節及び空調管理、視覚障害のため拡大読書機持ち込み及び試験時間の延長、盲導犬付き添い、妊婦は途中退席可、感覚過敏症により暗室、防音会場などである。

最も印象的だったのは軽度のパニック障害を持つ40代の女性で、緊張や混乱対策としてスーパーで買い物(長ネギやお菓子、果物など入っていた)帰りに試験会場に来ていた。おそらくあくまでも”特別な日”ではなく”日常生活の中”で試験に臨めるよう気持ちを整理していたのだと推察した。

試験終了後、最寄り駅までの帰路で、ある発達障がいのある受験生と一緒になり少し会話をした。

聞くところによると、試験は3回目とのことであった。つまり3年間 受験勉強をしていることになる。しかし彼は言う”今回もきっと落ちますよ。でも来年また受けます!なにをやってもダメダメなんでこの試験は合格したいんです。目標があると楽しいじゃないですか”と。

“目標があると楽しいじゃないですか”

いまでもその”笑顔”と”言葉”が脳内を反芻する。まるでワセリンの作用のように思考停止した脳内や枯渇した心に潤いを与えてくれるような爽やかさであった。

“自分なりの目標を持って人生を歩もう”と、そんなように強く思わせてくれる出来事であった。

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